[コンテナを持って歩きながら、ぎゅる、と片目だけがアロールの方を向く。
片目だけが白目を向いた男の顔を不意打ちで見た何人かの兵が、ヒッと悲鳴を呑み込んで、非難するような視線と共に、男の脇を通り過ぎていく。
当の本人は、それに半笑いだ。
転がっている人間に不快そうな顔をして──きっと、撤退準備をせず、そこらに落ちているせいだろう──、足に引っ掛けて脇に避けている男と違って、そうしない故にうっかり踏みつけてしまっている。
時々、か細い文句の声が聞こえてきて──男の耳に届いていないだけで、アロールの耳には踏むたびに聞こえているのかもしれないが──、男は思わず笑う。
踏んだ当人は意にも介さず、お前が悪いだろという顔をしている>>127。まったくもって、その通りだ。]