[かつて白百合のタグを提げていたフードの片側に視線が来ていたのを意識しながら、彼の興味に答えを紡ぐ。]
「白い家」の外の裏庭は、確かに誰と出会っても、
私を――私のこの(電脳化した)意識と身体の事実を
隠さずに居られる、自由な広い庭園。
ただその自由は、誰かに「守られる」保証もないもの。
それに、昨日まで傍にいてくれた長とも同僚とも、
もう顔を合わせられない、そんな寂しい庭ですね。
[「寂しい」と口にしながらも、オクリビの表情に陰は落ちない。
声音だけは孤独感を表現するように幾らか落ちるも、女の電子の脳は「寂しそうな演技」を自覚する。
目の前の「電脳化した男」の笑みからは、造り物の色がまるで感じられないのに――。
そう思考した時に、オクリビは一歩分フィジシャンへと歩み寄り、先程は抑えていた言葉を、ふと囁く。]