[職員室の扉を出てようやく深く息を吐いた。
結月は元来、刺々しい性格ではない。
けれど、苛立ちを隠し通せる程大人でもなかった。]
どうしろって言うの……。
[堪えきれなかった感情が唇から零れる。
小さな手が前髪をぐしゃぐしゃに乱した。
これでもマシな方だろう。きっと今回きりだ。
あの先生ならもう何も言ってこないはず。
結月は動かしていた手を止める。
誰かを思い浮かべるように顎が上を向いた。
その角度は、きっと相手と自分の身長差分だ。]
……松本先生じゃなくてよかったな。
[零れたのは、昨年退部届を提出した顧問の名だった。]