[そんな「いい感じ」のステージのわりに、フロアのお客様の数は非常に少なく見えた(どころかこの時点でひとり>>120しか見えない)。
それ故に、自分以外の観客の存在もまた気になってしまうところで……。]
君、ひとりでここに来たのか?
[舞台と比べて暗めのフロアで、風船を手にステージを眺める人型の客に、ショーを妨げない程度に声をかける。
ステージの眩さと音量に気を取られていたこともあって、この時点ではまだ機械工の勘は、相手が陶器の肌と宝石の瞳を有する「人形」であること――機械としての素性を見抜いていない。
こう声を掛けたヘロー自身もまた機械の躯体と声音でここにいる訳だが、その魂はあくまで人間のもの。
そしてここは夢の中。
何かの不思議が働いて、ヘローの「人間」としての気配が相手に伝わることもあったかもしれないが、さて。*]