[ゴウッと眼前に迫った巨大な右腕を、軌道を変えられないようにフットマンは寸手のところで体を捩って避ける。人間の身体で出来る、ギリギリのライン。
だけど、人間だからギリギリのラインを狙わなくてはならない。軌道が変わる前に別の場所に瞬間移動できるような身体機能は持ち合わせていないのだから。
避けたアリシアの腕が背後の噴水にぶつかって、瓦礫が舞った。
幸い、大ぶりな瓦礫は当たらなかったけれど、いくつかの瓦礫がフットマンの肌を掠って、小さな傷を作った。
地面に手をついて、バク転で幾らか距離を取る。
フットマンはとても“多趣味”。自分の天井に当たるまでは、なんでもかんでもやりきった。
だから、大抵のことは──そう、できるとも。]