[よくよく記憶を探ってみれば、この眼鏡の人は、いつもカウンターの中に居た気がする。
単に、それが当たり前の光景になっていたから気づけなかっただけ。
当たり前を当たり前だとスルーして日々を過ごして居た事を少し反省しつつ、カウンターの彼に話しかけた。]
こんにちは、
あの、それって、
手動の珈琲ドリッパー?ですか?
私、初めて見ました
なんだか楽しそう
[興味深そうに手元を覗き込み、言葉を漏らす。
自宅にあった家電類はほぼ全て自動化されていて、何かアクションを起こさなくとも、何時でも望む結果が手に入った。
自分一人の朝も、目が覚めれば暖かい朝食がテーブルに用意されていたし、カーテンのシェードは光を感知して勝手に開閉、部屋は知らない内に掃除されている。
仕組みを知らないブラックボックスに囲まれて育った世代。手動で何かするなんてレトロ趣味な人だけ。
かく言う自分もアイロン掛けルーチンが、そのうちの一つに数えられる。>>17]