[その直後か、知らないものを突然取り出して何やら声を吹き込んだり大振りな仕草をする様子は、少年は大人しく見守っていた。>>62>>63
その機器も会話も全く知らないことばかりだが、通信という概念自体は彼の世界で日常に馴染んでいたので不思議がることもない。
全て終わり相手が気を取り直したと見えたところで近寄り促し、共に資料館を後にする。その際に帽子は返した。もう泣かないから。
不安を紛らわせる為に手を繋いでもらいながら、妖精に押され急かされた道を逆順に辿り城の外へ、そしてロストガーデンを目指して二人は歩き始める。
最中、少年は気持ちが陰る度に手を繋ぎ直した。その代わりに笑顔は絶やさなかった。
なんだかもう一人兄が出来て一緒にお散歩しているようだ、なんてことを密かに思っていたのと
溢れんばかりの義務のない優しさを与えてくれている相手をこれ以上困らせないように。*]