最後まで飲み干したコーヒーカップの底を彩る跡。ソーサーに静かに置いて、ごちそうさまでした。 「とても、美味しかったです。」記憶が消されたら、もう同じものは飲めないのかな。そう思うと、一杯一杯って大事なのねって思うの。だって、アンダーソンが淹れてくれたものとも違うからその時の"機嫌"で変わるように、スイッセスさんの淹れてくれた珈琲が飲めないのはもったいないから。 「渡したいもの、ですか? はい、することもないので大丈夫ですが……」