ー 五月・校舎前花壇 お供えの正体 ー
[彼女の供えた花は、まだそこにあっただろう。
萎びはじめて、そろそろ片付けようかと考えていた矢先だった。
きっと花を処分した後だったら、声をかけることはなかっただろう。
目の前の小柄な女子生徒が振り向いて、制服のリボンの色で同学年なのだと知る。
疑問の声には頷いて、>>84 彼女から発せられた謝罪交じりの肯定と弁明には笑顔で返した。>>85]
いや、別に気にしなくていーよ。むしろお供えありがとうって言いたくて。
あと、疑ってないから大丈夫。大抵のやつだったら、ちょっと花が潰れたからってお供えしないだろうし。お供えするくらい気にするやつなら謝りにくるんじゃない?
だから、犯人だとは思ってない。安心して。
それとも俺、安心できないくらい怖かったりする?
[手を挙げたのを見てとって、苦笑しながらも、こちらも両手を挙げる。
髪は染めてないし、ピアスも開けていない。でも制服は着崩しているし、軽薄そうな言葉遣いはお世辞にも柄がいいとは言えない。
疑ってないよ、とアピールをした。彼女の考えた通り、これが犯人の自首する前なら、こうも疑わずにいられたかは定かでないけれど。
それでも今は、彼女を疑ってないのは本当だったから。]