[悩みに悩んでの結論であるのを松本は知っている。選択の自由があるのもわかっている。それでも松本は、彼女に一石を投じる]……なあ。逃がさないって言ったらどうする。[まるでラブシーンのような台詞だが、監督からの注意で『イケメンになりすぎないように』と言われている。松本は絵と自分を同化し語っているだけだからだ。行平は苦笑し頷いた。自分の顔はそこまで整っていないと思っているから。そして、どのようにやるかを原作を何度も読み返し熟考した上、むしろ脅しでもかけるような演技を試みたのだ]