―現在/お別れ会会場―(やだなぁ……)[講師から卒団章を受け取る卒団生の背中を見ながら、少年はそっと視線を落とした。鼻先がつんとくるのを誤魔化すように右足の爪先で床の木目―目玉みたいで少し怖いと思っていた―をなぞる。けれど、去年に比べれば少年は大人しい方だ。何せ、最後の歌が歌われるまではお別れはないと信じ込んで屋敷内を逃げ回ったのだから。]