[わずかな沈黙を挟んで、迷いながら、飯島は言葉を継ぐ。
心の中に異物が住んでいる。自分じゃない何かの気持ちを代弁しているようだった。]
いや、確かに。死んじゃったんだけど。
花は潰れたら戻らないし。君がお供えしてくれた花は確かに死んじゃったんだけど、ね。
でも、なんかそれって、生きてるってことだよね。
誰にも知られずに枯れてったら、死んだことも知られないけど、君がお供えしてくれたあの花は確かに生きてたんだよ。
君があの花が生きてたことを、知っていてくれたから。
だから、想いは生きてるよ。君がこの花壇を気にかけてくれた事実は残る。
俺がそのことを知ってるからね。うん。何言ってんだろ。
[顔が熱い。自分で言っていて意味不明だ。質の悪いナンパと張り合ったら互角以上に渡り合えると思う。
そんな思考で誤魔化さなければ、その場を離れたいくらいの恥ずかしさだった。]