[己が適任者だとはまったくもって思えない。
だが、この異邦人を世界に還す一月ほど後まで保護しなければならない義務が
今、男には課せられている。]
保護はしてやる、それが任だからな。
ただ俺は他の奴らのようにはしてやれん。
楽しくもない一月になることは覚悟しておけ、運が悪かったな。
あと、これを渡しておく。
[ついて来ているであろう後ろを突然振り返り、目の前に手を差し出す。
ころりと掌で揺れるのはギルドから支給された魔道具だ。
指輪の形をした、意思の通信が取れるもの。]
……ふん、いっちょ前に良い魔石が組まれてやがる。
これがあれば何かあっても連絡が取れる、付けていろ。
これから部屋に案内するが、何か聞きたいことはあるか?
[半ば押し付けるようにキリに指輪を差し出すと視線をまたまっすぐに向けた。]*