[そんなルミがポケットから何かを取り出す様に、最初、ハリコは瞬いていた。
出されたのは、血の付いたくしゃくしゃの紙。それが昨日ルミに宛てて書いた手紙であると察したのは、彼女から「読んだ」「届いた」と聞かされた時。丁寧に開かれた紙面に綴られた文字で、それは確証に変わる。]
届いて、たんだ。届けてくれて――…
[ここまでポケットの中に仕舞われていた筈の手紙への血の付き具合。それにルミの顔の銃創――この手紙を託した女の看守が得意に振るっていた銃の存在。「あの看守と殺し合った果てに手に入れた」という想像が、ハリコに言葉を途中で止めさせた。]
あの人からもぎ取れたなんて、
あなた、本当にすごい子ね、ルミ。
[それが“彼女らしからぬ”>>2:295殺人だということまでは考え及ばないまま――。
やはりここで溜飲の下がる思いが過ったのは、それだけハリコが件の看守に酷く虐げられてきた証。ルミにも銃を向けただろうことを思えば猶更。
もっともこれは、ハリコ自身が人の死に、己の内の悪に慣れてしまった証でもあるのだろうけれど。]