ー 春・空教室にて ー
[その日は美化委員の委員会会議の日だった。
飯島は委員会のメンバーに今週の目標を告げ、それぞれの担当場所 の様子を訊ねる。
といっても、わざわざ他のメンバーに訊ねるまでもなく、飯島はそれぞれの担当場所がどうなっているか、ある程度知っている。
やる気のある人、渋々美化委員になったものの熱意をもって活動する気のない人を活動から飯島なりに見分け、前者には花壇などの整備を後者には空き教室の清掃などを振り分けて、放課後彼らの担当場所の確認をしているのだった。
それ故に、半ば形式的なものになった活動報告を聞き、うん。うん。と相槌を打ちながら、締めの挨拶をしようとしたとき。
>>122 教室の扉が開いた。
ケン・ドリックの登場に、三年生のメンバーは驚いたような(一部のメンバーは何とも苦々しげな)表情をし、一年生、二年生のメンバーは緊張したような空気を作った。
それは飯島も例外ではない。彼が窓を破った問題児であることを、三年生のやんちゃな知り合いの噂で聞いていた。
暫しの沈黙。
飯島の表情は相手の出方を窺うようなものであったが、ケンから花壇のことを聞いた瞬間、表情が変化する。]