[「ごめんね」の手紙を胸に抱いたルミからの「ありがとう」>>101に、ハリコのくちびるから微かに息が零れる。
この脱出劇と先程までのレイルの手当での緊張状態、そして傷だらけのルミとの再会で高ぶった心の中でも、頭の片隅に薄らと“常識”が浮かばない訳ではない。
――殺人鬼。ヤバい女。反省の無いクズ。理解不能。
傍にいれば殺されるかも、指をへし折られるかも……なんて怖れまでは、満身創痍のその人を前に浮かびはしなかったけれども。
そんな忌避を綴った文字を読んでなお、「手紙をくれて」、「会ってくれて」ありがとう、と。
この場で見せられた手紙の上には、血の染みとは異なる、ふたつの水濡れの痕>>2:-147もあった。
あれは涙の痕だったのだと、これまでのルミの笑顔とは違う涙の顔を見下ろしながら気づく。]