[と、今度は彼女から私に質問が飛んだ。
私はぱちりと瞬きする。
訊ねられた本は彼女の同じ名前の作者が書いたものだから。
でも、目の前に作者がいるなんて人は想わないものだ。
だからまだ気付かずに答えた。]
『宙色の鍵』の事ですか?
はい、昨日読了しました。
私はよく亡き妻と本の感想など言い合っていたんですよね。
だからそういう相手がいなくなって
寂しかったのですが…
この船で知り合った方も偶然本を読まれていて。
二人で話を出来て楽しかったです。
もしかしてサンシアさんもお読みになりました?
…ちょっとそわそわしてしまいました。