[止め処ないルミの涙を前に、ハリコは咄嗟に笑顔を作って声を掛けようとして――]
それだけで、十分、なんて、バカね、……。
[上手く笑えなかったのはハリコもそう。
涙の中でもどこか幸せそうに伝えられた思い>>102に対し、安堵とも感謝とも負い目ともつかずないまぜになった思いは、「バカ」なんて曖昧な罵りの形でしか零せないまま。
もらい泣きみたいに左目に滲んだ涙が、一粒、二粒、ルミの頬に落ちてしまっていた。]
それでも、あなたに、その手紙を
よろこんでもらえたなら、嬉しいわ。
[ハリコにはこの時になって漸く、ルミを“ルミ・ビリヴァー”と知ってからも、ふとした時に会おうと思い続けていた理由が解った。
自分とも大勢の人とも違う彼女をなんとか受け入れようとしたのは、“Harriko”の作り手としてその理想を壊したくなかったからで――]