― 青年とタエナシと一緒に ―
『それは…、チョコレートと、言う、んだ
美味いか』
[石と勘違いしているソレの名を静かに訂正しながら、世話を焼かれる様を微笑ましく見つめる。
道中甲斐甲斐しく世話を焼く青年の姿も面白い。
ゴロツキ共ももう(徹底的にボコボコにしたので)襲ってこないし、こういう仕事も悪くはないなと思って居た。
『気をつけろ』と青年の言葉に重なるように忠告して、坑道の坂道を下り、そしてそこに居たのは――…]
『――……、 』
[つるはしの男が名を呼び、抱きしめるさまを静かに見ていた。
邪魔しちゃ悪いと、唇の前で人差し指を立てて、青年にアイコンタクトを送る。
さて、これからどうしようか。護衛任務が終わった気配を感じながら、幾つか考え事をしていた。
例えば、自分にはもう、あんなふうに抱きしめてくれる人は居ないのだなとか。
そんな雑音を。**]