[不意、ポケットに入れていた行平のスマホが振動を告げる。撮影の間は邪魔にならぬよう電源を切っているが、今は休憩中だ。相手はーー…一年前に別れた妻、偲(しのぶ)であった]久しぶり。ああ、今は『─玉響に“なけ”─』の撮影中。そう、教師役。丹田さんと一緒なんだーーうん、大丈夫食べてるし。ありがとう。そっちも元気で。……じゃあ。