[織部偲(おりべしのぶ)は、行平とは別のプロダクションに所属する女優である。
行平は『錠と輪』で彼女と共演し、それをきっかけに交際を開始。半年で籍を入れた。
しかしその結婚生活は子宝に恵まれる事もなく短く終わる。
偲の最後の言葉は『あなたは演技の事ばかり考えていた。寂しかった』そんな、ありきたりで。
同業なのだから、仕事については理解を得ていると思っていた行平はショックを受けたが引き留める事はしなかった。
今では、二人は友人である。
夫婦であった時と余り変わらない距離感の。
行平演じる教師・松本も離婚歴があるが、妻に浮気され逃げられたという設定だ。
同じ離婚でもまるで違う。
自分も逃げられておけば役への理解が深まったか?なんて思ってしまった行平は、偲の言う通り役者馬鹿であり、離婚されても仕方ないのかもしれないーー]**