[こうして本来の休憩時間を24分削った昼休みに(昼休み自体は取らせてもらえた)、漸くシェルタンは昼食にありついた。
時間があまりないこともあって、ここで抓むのは本当に簡単な軽食。
薄明の中でも育つ穀物製の円形パンに、やはりこの土地に適合した豆類のペーストを挟んだサンドイッチだ。]
《 そうだ、あの人だけじゃない。
一座にも、ファンたちにも、
世話になったスタッフたちにも、
僕から一言くらい……でも、 》
[自身の生存と居所を明かす手紙を迂闊に多くは出せない、という逃亡者の思考。
それでも仲間や支援者を心苦しくさせたくない、という「一座の一員」の思考。
穀物の微かな甘味と豆の油味を感じ取りながら、宿主らしい思考のあいだで“ 演者 ”は迷う。]