[いったいこの街の水面下で、何が起ころうとしているのか。
交易の中継地たるこの街に不相応な程度には資源が集まっている、という嫌な予想の裏付けが取れ、気が沈む。
組織に直接関与するのは悪手だと理解していた。父という後ろ盾のなくなった今の私は組織の決定に抗うことができない。
宿の保全という目的を思うと、少なくとも今の段階では、起こりうる障害よりも単独行動の自由度が勝ると考えた。]
……それに、お爺様の思惑もわからないのよね。
[私を表社会に送り出そうとした時の眼。
何か面白いものを見るような目が、脳裏を過る。私を年相応の少女として扱う組員達とは違う、不気味な目。]
もっと深入りしなきゃいけないのかな――
[そういえばアテが無いこともない。
それなら明日はちょっとしたスパイ気分ね、と生前に見たドラマの内容を思い出しくすりと笑う。
こういうの、けっこう性に合ってるのかも、なんて独り言ちながら。]