ある日の夜雀亭・フィジシャンという名の常連さん
[私を見る瞳は二種に大別された。ひとつは健気に働く童女に対する穏やかな瞳。
そしてもう一つは――"アリシア"の正体を知っている瞳。
組織に所属していないとはいえ、家族は家族。
触れてもいい事は無い存在であるはずの私を気に掛ける人、というのは、何らかの思惑を持っているはずだ。
その中で一人、雰囲気の違う男性にお酒を注ぐと、声をかける。]
ねえ常連さん、わたしたちお喋りしたことないよねえ。わたし何か面白いお話を聞いてみたいな?
たとえば、常連さんのお仕事のお話とか!
[フィジシャンと名乗るこの男は、私に対する害意は無く、むしろ私の様子を窺っているように感じられた。
>>136彼はきっと夜の女王のメンバーで、私の監察でも宛がわれたのだろう、と当たりを付ける。
当たりを付ける、というのは、この時は適当な嘘ではぐらかされてしまったため、確定ではないということを心に留めておくという意味の表現であるのだが。
その後も幾度と店を訪れるフィジシャンをアリシアは笑顔で迎え入れるだろう。
どうにか彼を通して組織の持つ情報を得られないだろうか、と聞き出す作戦を練りながら。]