身体弄ばれてまで
生きていたくなんてないんでね
[尤も、これは自戒でもあった。無知だったころの俺を顧みれば、身体弄んで尚、生きてほしいと願った相手がいた。そう、無知だった。この世の恩恵に、何も代償が無いはずはないのだ。何処かで利を得る者が居れば、その分不利益を被る者もいる。より高みを目指す技術のためには、その何百倍もの犠牲が必要だってこと。実験鼠は多ければ多いほうがいい。
犠牲は、“スラムじゃうってつけだった”。毎日身元の分からない死体が上がり、誰も迎えに来ることがなく。葬儀屋がせっせとそれを運ぶ世界で。一人居なくなろうが解らない。
…代償の代わりに金を積んだだけ、相手は良心的だったのかもしれないなんて、これはきっといつか余裕のある日の俺が、気づいた何か。今じゃない。]
なァ、アンタにとって生きるってなんなんだ?
[距離をもう一度取り、ナイフを拳銃へと持ち替える。その銃口は相手に向けられ、1発、2発と発射されるが、左肩が上手く動かない上、腹の傷みも相まって、それは全く当たらないだろう]