いつまでボクは見習い?
[砂埃の舞う屋根の上を光の速さで駆け跳びながら、上官だったか先輩だったかに聞いたことがある。トループで育って8年、メトロポリスで一部“改人”となってから10年。軍には改人となってからすぐ配属されている。そろそろ認められてもいい頃合いなのではなかろうかと、あからさまに不満を滲ませる横顔には未だ幼さが残る]
南西に敵部隊発見。南南西、森林地帯に偵察兵。了解、東に向かうね。
[”足”はそのまま東方向へ切り返す。瞬きするころには、そこに少女の姿は無かっただろう。
生まれつきの改人ではないが、母親の遠縁を頼ってメトロポリスに来た時に最初に施してもらったのは”足”だった。自身の足は、まさに光の速さで駆け跳び回ることができる。尤も、それすら標的として見定められる”目”があるのだとしたら、紙屑の偵察兵はひと溜まりもない。
地を駆け、瓦礫や屋根の上を跳ぶ。攻撃できるスキルも防御できる装甲も持ち合わせているわけではなく、なけなしの防弾服が命綱だ。紙のような命綱を頼りに棄て駒は今日も戦場を駆けた]