[風もないのにパラパラと頁は捲れ。
今の主の思う通りに止まる。
紙に描かれた魔方陣が滲んだかと思うと本を抜け出し、ぶわりと風をまとって目の前に浮かんだ。
目を閉じ詠唱する。重々しい声がさらに空気を震わせる。]
かつて闇に紛れしものよ 今 意思を取り戻し
我らに力を貸しておくれ ともに彼らを導こう
封印解除――!!
[魔方陣から勢いよく飛び出すのは、小柄な黒のオオカミ。
身体はすべて影のように毛並みさえ識別できず、両の瞳だけは本当のオオカミではないと教えるように、白く光る。
これは幼馴染が前に倒し、譲って貰った魔物だ。
小柄で噛みつく力はそう強くはないがとにかく足が速いから、逃げようとする弱い魔物たちを翻弄し、うまく追い立て連れてきてくれる――バットをふるう幼馴染のほうへ。]