[さて、何故突然周辺の様子を確認しているのかと言うと……先ほど、食糧庫側でガサゴソと異音が聞こえた気がして、私は小さく息を吞んでいたからである。
看守? 囚人? 気のせい?
もしもここで襲撃を受けた場合、お世辞にもウォールオブフィア(要塞)は耐久性に優れているとは言えないので、この場所を放棄するか迎撃を余儀なくされる。
逃げる場合には見通しのいいグラウンドエリア側に踊り出るしかなく、脱走囚人だと撃たれる可能性は半々。
後ろから挟撃されれば更に絶望的な為、脱出は却下。
迎撃をするには、武器が必要だが人の波に飲み込まれるのを避けるのを優先した為に荷物は必要最小限。
手元には義父からのお菓子に、畑の中で栽培されていた野菜と周辺に設置された体格的に振り回せない農具のみ。
……せめて口が使えれば。
咬合力には自信があり、首筋を狙う捨て身戦法であれば、余程相手が警戒していなければ、先手と怯みがほぼほぼ成功し、一撃必殺初見殺しで相手を無力化させる事が可能で、だからこそ脅威だとみなされていたりする。
しかしそれは拘束具がない場合の話で、私の膂力では残念ながらピエロしか倒せない。か弱いレディなのである。>>1:283
いずれにせよ、そっと息をひそめて様子を見る。不用心に近づいて来ようものなら、玉ねぎの汁でもかけて目潰しを狙うべきか。**]