[さて、ここでこの男に殺される意志はないが――意思自体、浮かばずに済んだ――彼にトドメを刺す意志もない。
今は周辺に見当たらない「BloodSun」の郎党が合流してくることも考慮して、オクリビは素直に>>164カタナを己の後方に投げ捨てた。
それからポンチョの中に手を入れ(疑念招かぬよう、ゆっくりとした動作で)、胴体に装着していたボディベルトとポーチも外してその場に落とす。ベルトのポケットには手榴弾と短刀が収められているのが外からでも見える。念の為の武装解除だ。
もしこれらの武器を奪おうとする第三者が現れるなら、その時は空中を旋回する「鳥」がアラートを鳴らすだろう。]
私がここに来たのは、探索、情報収集の為です。
[体勢を立て直した自称アイドルの女は、「アイドルステージ」「表の世界」についてはここでは触れぬまま、淡々と答える。
傷口から散る火花は血の如く、目から散る火花は涙の如く――などという言葉も特に脳裏に浮かばせずに。
右腕も脚も動かぬまま、それでも仕込み刀を向け続けるだけの敵意を露わにする男に。
女は丸腰になってなお、表情一つ変えずに向き合う。]