[目の前を行くリオさんのコートからまた僅かに煙の香りがする。
―― コーヒーの味がわからなくなるから1本だけな、と悪戯っ子のように笑って大事に煙草を吸う人の指先を思い出して俯いたとたん、振り返ったリオさんが掌を差し出した。>>155]
なんですか、これ
[指輪の形をしたそれを受けとって、ためつすがめつ眺めてみる。連絡が取れる、というけれど、何かしらの発信ボタンやなにかは見当たらない。組み込まれた石がスモーキークォーツのようにきらりとひかって、それはまるでリオさんの瞳の色のようだと、そんな風に思った。
思いのほか大きく重たいそれを、右手だと邪魔だろうな、程度の考えで左の人さし指にはめた。]
どうやって使うんですか?
[つけてみたのはいいものの、ボタンもないので使い方が全く分からない。手のひらをくるくると自分に向けたり、反対にしたり指輪を確認しながら首をかしげる。]