[そんな予定は一切ない。ありもしない、もしもの話。
ヌルはいろんな所へ行く。沢山の人の様々な話を聞く。そこにあるのは、噂だけではない。
内緒話をするときに、道端の石ころを気にする人間がどれだけいる?
「この石に話を聞かれるのはよくない」なんて考える人間がどれだけいる?]
あはは!
[自分で思いついておいて、その非現実さに笑ってしまう。]
ん、なんでもないよ。
[不思議そうに顔を覗き込んでくるグリムを、そっとなでる。
ひとしきり笑ったら、作業に戻ろう。レインコートはすっかり赤くなってしまったけれど、そんなこと気にもせず、通りの外れ――新しい国へと向かった。]