[さて、カラオケルームの扉によくある透明な窓のほうを振り向けば、誰かがこの「ツバサ様のショー」を見てくれているかもしれない。そこまでは白薔薇も考えてはいました。
何曲も何曲も歌い上げてから白薔薇はテーブル上のグラスにくちびるをつけ、中の冷たい水をひとくち、ふたくちと飲み下しました。
冷たい水が身体じゅうに染みわたる快さと安堵は、根からの吸水でも経口摂取でも変わりありません。
安心した心地で一息ついた白薔薇は、ここでカラオケルーム扉によくある透明な窓のほうへと視線を向けたのですが……。]
誰もいない、か。
[白薔薇はそう思い、再びカラオケモニターの方へと顔を向けなおして次の楽曲歌唱へと移りました。
この時はちょうど、不器用ながらも愛の籠ったお手製団扇を手にした女将さんの姿が上手いこと見えない立ち位置とタイミングだったのです。
女将さん、地上用ブラウン管のテレビでは放送できなかったワンマンライブの特等席をゲットできて良かったですね! そして推し団扇を白薔薇にうっかり見られてしまわなくて良かったですね(……?)>>117>>118>>119**]