[報酬ぐらい払わせてくれ、と言う彼に、慈善活動だぜ?と男は肩を竦めたけれど。職業病なんだと聞けば、ああ傭兵かと納得して、「じゃあ有り難く」、とクレイの申し出を受け入れた。
さて、歩く壁がやって来たら、どんなに浮かれていても生き物は避けて移動するものである。こちらが避ける前に、相手側が此方を避けてくれる。
たぶん、この二人は生まれてこの方、移動に苦労などしたことがないのではないか──そんなふうに思う者も、もしかしたらいたかもしれない。
そんなことはない。誰だって、生まれたときは矮小な赤ん坊なのだ。
あっちこっち周囲を何度も見渡して、無意識に逸れていきそうなクレイの手を引っ張って進行方向を正す。
そんなことをしながら、脳裏に過ぎる偵察兵の姿。
彼も、これぐらい周囲に興味を持ってくれたらいいのだけれど、と内心で苦笑した。]