[「先輩」に重ねた言葉が、ここで漸く、白薔薇自身にも重なります。
植物として元々そうだったという違いこそあれ、逃げ場を得られなかったこと。
積極的な加害もその意図もなかったとはいえ、誰かの心の都合でおぞましい苦痛を強いられたこと。
自分自身の変化……までは白薔薇は考えてはいませんでしたから、「先輩」と自分との境遇の重なりは、至って限られた範囲のことではあります。
それでもその人にここで掛け続けた言葉が、ふいに自分に対しても思い当ったのです。]
そうか。そうだな。
君も、私も、何も悪くない。
[それまで努めて穏やかだった白薔薇の表情が、僅かに崩れました。
ともすれば悲しみの表情とも取られ得るものですが……これは、自らを赦そうと思えたことの証でしょう。]