「でも。その遺稿を持って行くと言うことはどういうことか、分かってるんよね。それは、未来を少し、変えてしまう可能性がある。持ち帰るなら何かしら考えてるんよね?
考えなしだったら、あるいはできれば。このままこのサロンに置いといてくれれば。
サロンの目玉にもなるし、何より貴女は衰退期の魔術文明で功績を残してる。"リピーター"として、もしくは、あわよくば私たちと一緒にスタッフになってくれると嬉しいんだけれど?」
[カウンターの魔女が意地悪そうに笑みを浮かべれば、客の魔女は困ったような笑みを浮かべて。]
ごめんなさいね。どうしても、これが必要なの。
最初は、なくしたものがないことに気持ちが悪かっただけ、見つかったら嬉しいな、程度だったわ。だけど、このノートが必要な人が居るの。
[それに。この遊園地で慕ってくれた人。慕っていた相手が悪い魔女、だなんて。その人たちに悪いもの、と。自分が死んだ後のことなんて、気にしてなかったのに。]
思ってたより。私ってわがままみたい。
「残念、フラれちゃった。」
[カウンターの魔女は肩をすくめて、それじゃ、と。]