>>175 ウロボロス
[人の嗜好はそれぞれだ。
それは薬師なんて人の身体や心に深く関わる仕事をしていて常々思うことではあるが、今日ほど実感を持ったことはない。
紅の混じる瞳に射られ、温厚な彼もこんな目をするのかという気持ちと、血なら誰でも良いのだろうかという気持ちが混じりあう。ちょうどこんな、紅と紫の妖しいグラデーション。]
……長いですよ。
[彼が顔を離してからそう文句を言う。終わるまで律儀に待ってしまった。
更に手首に触れられると、さっき少しだけ開いた傷がひりついた。
包帯に血が吸い込まれる感触。]
あの……どうかしたんですか。
[何が起きているのかわからない。
彼はどうしてしまったのだろうか、暑さにやられたか?と、心配そうに見つめた。]