「飯島の心中は穏やかだった。
掴み所のない後輩だが、言葉や行動に嘘は感じられない。
それがより一層飯島に奇妙な印象を抱かせたが、彼なりの誠意で手伝うというのなら、わざわざ断るほどでもない。
これが飯島を気遣った故に発した言葉で、手伝わないことになったとしても不快感や怒りを感じることはないだろう。
むしろ、不器用ながらに彼が見せた誠意で、心が落ち着いたように感じる。
正直、返事がどちらであっても構わなかった。
飯島としては、自らの心が平静を取り戻した時点で、事態は一段落していたのだ。
しかし、その心の平穏も、思いがけない一言で崩れ去ることになる。」
ー玉響に“なけ”ー 原作小説より一部抜粋