[……さて、白薔薇自身の意思としてこう「先輩」に接しはしましたが、果たしてこれで良かったのでしょうか。
白薔薇は確かに心や感情を持ち、人や他の動物のように考えることもできますが、それでも人間とは異なる生き物です。先程伝えた感謝がどうにも「先輩」に受け止められていなかったこともあり、白薔薇はまた少しだけ考えてしまったのです。
人間という生き物からこうした身の上話を聞いた時、人間であるツバサ様なら、或いは理音なら、なんと答えていたのでしょう?]
君にとって、とてもつらいことを、
私に話してくれて、ありがとう。
[幾らか考えてから、白薔薇は「先輩」にこう付け加えました。
これは、中学生だった頃の――『告白』に救われたあの頃の理音がツバサ様に宛てたファンレターへの、ツバサ様ご本人からの返信に綴られていた文字の記憶です。理音は自分の苦境とそれを救った楽曲への感謝を、あの御方にひそかに伝えていたのですね。
そしてこの苦しい思い出を桃李に詳しくは打ち明けられずとも、『告白』のアツい解釈語りという形で「あの頃の思い出」を口にしていた程度には、当時から彼のことを頼れる先輩、心を許せる「仲間」としてみていたのでしょうね。>>136**]