国、かァ
[白い花の隣を守りたいだけだ、なんてそいつは言う。本当に守りたいものは何なのかと、俺に問う。不味いけど命を繋いでくれるパンを齧りながら、俺は言葉を考える。]
そうだなァ
こう考えたら、わかりやすいか?
トループがなくなっちまったら。
んー。あんたが言う「俺の国」はなくなっちまうんだ。
トループがなくなっちまったら。
穴掘り帝国も作れなくなっちまう。
[白い花は悔恨と懺悔。あの場所で喪った後悔。年に一度、欠かさず10年通えているのは、時折抗争があろうともあの場所が喪われていないから、自分の居場所がちゃんと裏通りにあるから。まだ、信念を曲げずに戦えているから。悔恨と後悔を抱けるぐらいに、まだ電脳化に対する反発を抱き続けているから。
……何も白い花を捧げに来れなくなるのは、場所が失われたときだけじゃない。「電脳化の貯めに仕方なかった」、信念を曲げてそう思い始めてしまった暁には、俺は白い花を捧げにくることはなくなるだろう。10年続くそれは「弔い」の形をした「弔いではない何か」だった。]