縫合修善 ハリコ

Xデーの前の日々に

[ある時、ハリコは独房内で手紙を書いていた。
　塀の外との手紙の遣り取り自体は、これまでも母やルリコ、資金の提供元でもあるマーチャンダイザーと交わしてきてはいたのだが、そうした人々とは異なる相手への手紙をハリコの方からしたためていた。
　これは本当に、ほんとうに穏やかな、日常の範囲内の手紙だ。

　これは、ペンで丁寧に文面を綴った、白い無地の便箋。
　その上部には、バレンスの下の妹の名が“Dear”と共に記されている。]