[光合成には光エネルギーのほか、二酸化炭素と水を必要とします。
そして、水を得られない状態で日々炎天下にさらされ続ければ……。
それは白薔薇にとってただ、あつくて、かわいて、しおれてしまうだけのことなのです。
何日も何日も水を吸えないままのバラの苗のそばに降りてきた精霊たちがいのちを枯らしに来た訳でないとは、白薔薇の樹霊にだって考えることができました。
いつもなら生命の恵みをもたらす陽の精霊たちがおろおろと動き回り、共に悲しむすがたを感じ取っていたから、わかったことです。>>151
それでも、水のない植物のからだに宿る樹霊は、あの時の照り付ける陽の光と大気を「あつくて」「くるしい」ものとして記憶しました。
完全に枯れ果てていのちが尽きるさいごの記憶の中でまで、その感覚は残り続けています。
その記憶のせいで、白薔薇は陽光の精の存在をさとっても、すぐには声を掛けられませんでした。
ただ他のお客さんたちに対してと同じように、特に返事を求める訳では無いあいさつ>>174をかけることしかできなかったのです。*]