私の話を少ししても宜しいですか? もしかしたら、なんのヒントにもならないかも しれませんが。[つい、と目線を虚空に漂わせる。片手は胸元にそっと添えた。想いが、思い出がそこにあるかのように。] 連れ添った妻がいたんです。 少し前に亡くなってしまったのですけれど…。 彼女はね、生前にこんなこと言ってたんです。 『朝起きたら一番に私にキスをして』って。 私は彼女の小さな額にそっと唇をあてるのを 毎朝の日課にしました。 その度にね、彼女は恥じらうんです。 頬を真っ赤にして、目を潤ませて。