>>112>>113ユーク
[やはり、魔力から来るものではない、不思議な薬効を彼の薬は持っているという。人の世とはまるで常識の違う世界に暮らすリスティリナには、それがどれほど驚くべきことなのかは分からなかったが、少なくとも魔力を用いず体を浮かす薬などというものは、聞いたことがなかった]
お邪魔します。……あなただけでなく、この子たちも日の光が苦手そうなのね。
[案内された彼の住まいは、暗く締め切られたいかにも仕事場、もしくは倉庫といったような雰囲気の場所で、どことなく彼らしいと思った。まずは件の浮遊薬を差し出され、それの入った包みを手に取ってきょとんとした顔で眺め]
……ふぅん。これが、その薬なの…。
なんだか、お菓子みたいね。子供用の甘い薬とか、あるけど、そんなようなもの?
[お代を聞いて、先に支払いを求められれば支払う。他に彼女の興味を惹く商品はないかと、彼が考えている間、なんの気なしに見回した室内に、何となく認めた「宵」「教」などの引き出しの文字について、気になって尋ねてみた]
……あの、この暗号みたいなラベルは何?
もしかして、人には言えないようなお薬、開発しちゃった?
[揶揄うように目を細めて唇の端に笑みを浮かべながら、そう聞いて。果たして無愛想そうな彼はどんな反応を見せるだろうか、そんなことも少し愉しみに思いながら。]