[実は全てを無かったことにされたわけじゃない。俺に送り届けられたものがある>>1:280。妻だった何か。それは小指の先か何かの血がこびり付いた小さな肉片と骨だった。その骨は、どこかの墓標に埋められることなく、今も大切に持ち歩いている
大輪の白百合の痕跡。俺は見たことがなかったが、ただ。
スラムのガキどもがそこらへんに落ちてるにしては莫迦にでかい花束を持ち歩いていることがあって、なんだありゃ?と疑問に思ったことはある。この件と、その時の光景が結びつくのは、今ではなくてもう少し未来の話。
鳥とともに女は去る。長く息を吐き、見上げた空は灰色で。蒼穹の広さと美しさは未だ拝めそうにない。**]