[結局は、互いに「こんにちは」の挨拶を交わしただけになってしまいました。]
私は、…………。
[どこか別の場所へ行くと思しきその人からそっと顔を逸らされてしまったこともあって、白薔薇はついにこの場では自ら「私はツバサ様ではない」と伝えることができませんでした。
この人間もえりざべーとのように自分たちがこのお宿にいる意味を理解しているかどうか、白薔薇にはわかりませんでした。
もし理解しているのだとすれば……「ツバサ様が死んだ」という誤解が広がってしまうかもしれません。たいへん!
それでも白薔薇は、ラウンジを出ていく若者を追いかけることができませんでした。
そういえばあの女の子が家を出ていった時も、文字通り土に根を張る白薔薇には、その子を追いかけることはできませんでしたね。*]