―回想―
[初めて卒団式を迎えた時は、入って間もなかったからか、よく分かっていなかった。
周囲の子達が泣くのにつられて泣いてしまったが、帰りの頃にはけろりとしていた。
けれど次の練習に卒団を迎えたお姉さんが来ないのに気付いて呆然とした。
二度目の卒団式は、母のお産があって欠席した。
最後の練習日に別れる子に手紙を渡した。
別れ際にぎゅうっと抱き着いて泣くのを、困ったように笑いながら背を撫でてくれたのは、優しくしてくれたお兄さんだった。
声変わりを迎えたので卒団をする事になったのだという。
彼が声が出にくそうだったのには少し前から気付いていたが、風邪を引いているのだと思っていた。
男の子は声変わりを迎えると卒団しなければいけない。
──という合唱団のルールを少年が認識した瞬間だった。]