(あの人は、今、どうしてる?
……あたしはきっと、あの人の思い遣りを、裏切っている)
[ハリコは結局今に至るまで、己の口からこの脱獄の話をバレンスに打ち明けてはいなかった――できなかった。誰が何と言おうと、これはれっきとした逃走罪。こんなことには「出来る限りのこと」もしてくれるはずがない、と。
その人がこの騒動の中でハリコの保護に動いていたこと>>86にも、己の手を引くレイルを見逃していたこと>>87>>88にも気づかぬまま。勿論、『休暇届』>>34の存在も知らぬまま。
……ちなみにだが、このXデーの前に、ハリコはバレンスの下の妹に手紙>>1:361を書き綴っている。
この絶海の監獄故、その手紙が検閲を経た上で(ザル検閲の可能性もあるが)実際に彼女のもとに届くのは大分先になるだろう。]