[根岸は己が誰よりも未熟であると思っている。
9年目な演劇人生で名のある役を貰った回数は片手で足りるし、
事務所に所属する数ヶ月前までバイトを掛け持ちしていた。
今だってこの作品には有難いことに縁があったが、
その他のオーディションの成果は決して順調とは言えない。
数才上の彼女は自分と同じ年から演劇を始めたという。>>13
しかし実績は全くの別物だ。>>9
彼女の姿を目にする機会は画面の向こうの方がずっと多い。
しかし、彼女は決して驕らず、無名の根岸にも優しく接してくれる。
だからこそ、根岸も緊張で縮こまるのはもったいないと
敬意を持って出来る限り普段通りの反応を心掛けた。>>137
年下の彼女とは劇団出身であることが共通点だ。>>84
公演が被ってしまうとなかなか都合がつかないが、
他劇団の作品を見ることも研鑽の内であるから
彼女の演技は何度か直接見たことがあった。
1人13役を演じきった姿はきらきらと輝いて見えたものだ。]