― ある日の夜雀亭:アリシアと ―
……そうだったかな?
[お喋りした事が無い。と言われれば、数秒そうしらばっくれる。>>167
自分は唯の、この店の常連客。
そうでは無い事はバレているだろうと思って居たが、急に相手から詰められた距離に、注がれた酒を片手、余所行きの笑みのまま瞬きを数度。
この状態でのしらばっくれは通じないと判断すれば、後ははぐらかしに入るだけ。]
わたしの仕事は医者――
内科医だよ
[己の本名は既にない。
空白のプロフィールを埋めるかのよう、上書きされたのは唯のコードネームで。普段名乗る肩書をそのままに、そううそぶく。
軽い応急処置位は心得ていたが、実際は医者でも何でもない。
まあ『頭の中の検査』ならば得意分野であったが。]