>>198ユークレース
[ふわふわした謎の物体があるかもしれないと思ったが、几帳面な男は物を出しっぱなしにする事はないらしい。
それは妄想に終わり、大人しく戻ってくるのを待っていた。
それ程待たされる事もなく、箱を抱えた男は戻ってきただろうし。]
…良い香りだ。
[箱を開けたと同時に漂う芳香に一言だけ言葉を漏らす。
顔を寄せる事はしなかった。これで十分だった。森林を思い出すような心地よい香りだ。
時間を掛けて吸い込んでいれば、人間には何らかの作用が起きるのかもしれない。
しかし人間はなく、ましてや今は性別すらない自分には何の効果も受ける事はない。
ただ、良い香りを愉しむだけ。なので箱の蓋が閉じられるまではそうしていただろう。
男も効果が顕われるような時間、嗅がせてはくれないだろうし。]